ナポレオンの大陸軍騎兵は19世紀ヨーロッパの会戦においてもっとも華やかな兵科でした。そして、ヨーロッパ最強の騎兵として各国に恐れられていました。
胸甲を着けた重騎兵から派手な衣装の軽騎兵ユサールまで、騎兵について、どんな種類があったのか。戦場の花形の騎兵の編成や運用と軍服についても解説します。
大陸軍(だいりくぐん、フランス語: Grande Armee、グランド・アルメ)は、1805年にナポレオン1世が命名したフランス軍を中核とする軍隊の名称である。19世紀初頭にナポレオンが作戦を実行するために自らの勢力圏の国々から召集した多国籍軍の総称である。
フランス語のarméeという語には「陸軍」英語の「army」と同じ。Grandeはフランス語で「大きい」の意味で英語の「big」です。
日本語表記の「グランダルメ」はフランス語の発音の際にリエゾンするため
19世紀の騎兵は2種類
騎兵は大きく分けて重騎兵と軽騎兵に分類されます。
この2つは運用方法の違いでから来ており、使用された馬も違います。
順次、説明します。
重騎兵とは
重騎兵はフランス軍の場合は胸甲騎兵や騎銃兵が該当し、集団での突撃と白兵戦を目的とした打撃力に使われました。
よって馬も大型で脚が長く、スピードの速いヨーロッパ種が使われました。
軽騎兵とは
軽騎兵は偵察、護衛、散兵線の確保や敵軍の後方撹乱などが主な任務です。
用いる馬は小型で、持久力の優れたアジア系です。
持久力が求められるのは、後方撹乱や偵察任務は移動距離が長いためです。
フランス軍では騎馬猟兵、槍騎兵、竜騎兵、軽騎兵(ユサール)を軽騎兵に分類する。
広義の軽騎兵と狭義の軽騎兵
日本語訳では軽騎兵は2通りの意味があります。
広義ではlight cavalryで兵科での軽騎兵と狭義のhussar(ユサール)兵種での軽騎兵があります。
フランス大陸軍の騎兵の種類
ナポレオンのフランス軍の重騎兵の2種類から解説します。
胸甲騎兵(キュラッシエール)
胸甲騎兵は読んで字のごとく、鉄製の胸当て(胸甲)を着けた騎兵のことです。使用する馬は大型で足が長い瞬発力のあるヨーロッパ産です。
密集隊形での打撃力をさらに増すために鎧を着けています。ただ、鉄製の胸甲はマスケット銃を弾き返す程は分厚く無く、白兵戦の刀剣の防備にしかなりません。
装備はピストル2丁を持っており、後に銃身の短い騎兵用のマスケット銃も支給されました。
戦場においては鉄製の派手なヘルメットと胸甲が光って見える為、その打撃力の強さで有名であったので敵軍からは恐れられました。
乗馬騎銃兵(カラビニエ)
騎銃兵は騎兵銃と刀を両持った2刀流の騎兵です。連隊創設時は胸甲は着けていませんでした。
鉄製のヘルメットではなく、近衛擲弾兵や近衛猟歩兵と同じ熊毛皮(ベアスキン)で小ぶりの帽子でした。
1810年に胸甲騎兵の活躍から同じように着けるようになりました。乗馬騎銃兵(駆逐騎銃兵とも訳す)は金色の鎧とヘルメットで胸甲騎兵は銀色でした。
騎馬猟兵(シャッスール)
騎馬猟兵はフランス軍にしかない騎兵です。主な任務は偵察と散兵線の構成です。戦い方は馬上からの射撃で、集団的な突撃のような打撃目的ではありません。
騎馬猟兵はシャッスールと呼ばれ、その意味は追撃ですので敗走する敵軍の追撃任務を得意としました。
槍騎兵(ランシエ)
フランス軍では廃止されて久しい槍騎兵でしたが、ロシア軍の精強な槍騎兵(ウーラン)やコサック騎兵の活躍を見て1811年に再び創設されました。
最初はポーランドの騎兵連隊とフランスの猟騎兵連隊から近衛槍騎兵連隊を創設しました。
同時に戦列槍騎兵連隊も竜騎兵連隊から再編され2個連隊作られました。が、当初はロシア槍騎兵の前に何度も敗れています。強かったのは近衛槍騎兵のポーランドとオランダ部隊とヴィスラ軍団(ポーランド軍)のみでした。
長い間、運用していなかったので無理もありません。
竜騎兵(ドラゴーン)
竜騎兵は重騎兵ではなく軽騎兵の分類です。実際は乗馬歩兵と呼んだ方が良さそうな戦い方でした。
竜騎兵は刀とマスケット銃の両方の訓練に重点を置かれ、戦場の状況に応じて下馬して集団で歩兵として戦いました。
当時、フランス軍は騎兵連隊が多くあり馬の絶対数が足りないという事情がありました。竜騎兵を下馬させて歩兵として運用している間、馬を他の騎兵連隊に回していたので全体的に竜騎兵は士気が低かったようです。
軽騎兵(ユサール)
軽騎兵(ユサール)はヨーロッパの国々でハンガリー軽騎兵と同じ服装です。ドルマンと呼ばれる独特の服とペリセと呼ばれる毛皮のついた豪華な上着を着用しています。
運用方法は連絡や後方撹乱が主な任務で、14個連隊しかなくフランス軍の騎兵の中ではエリート連隊でした。きらびやかな服装で志願者も多かったのです。
ユサール(フザール)
15世紀のハンガリーの発祥の華麗なスタイルの軽騎兵のこと(驃騎兵)とも書かれる。
また、その衣装は派手できらびやかだったために当時の貴族階級も好んで着用し、ヨーロッパ列強では歩兵のコスチュームにも取り入れられていました。
ナポレオン帝政大陸軍の騎兵のまとめ
ヨーロッパ全土で恐れられたナポレオン軍の騎兵の概要がお判りいただけたでしょう。
フランス軍騎兵の種類は下記の通りです。
- 胸甲騎兵(キュラッシエール)
- 乗馬騎銃兵(カラビニエ)
- 騎馬猟兵(シャッスール)
- 槍騎兵(ランシエ)
- 竜騎兵(ドラゴーン)
- 軽騎兵(ユサール)
最強と言われたフランス軍騎兵は胸甲騎兵でした。あまり知られていませんが槍騎兵は近衛連隊とポーランド槍騎兵を除いては弱かったようです。個人的には槍騎兵は大好きな兵科と衣装なのですが。
ナポレオン帝政の大陸軍歩兵について知りたいかたはナポレオン帝政の大陸軍(グランダルメ)の歩兵の編成と種類についてを参考にしてください。
今後はイラストだけでなく製作中の28mmフィギュアも載せていきます。お楽しみに! joeでした。
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